内分泌生理学講義

1998年2月 丸善株式会社 刊 ISBN4-621-04544-X 定価4,800円+税


本書は医学生・看護学生および関連学科の学生を対象に,膨大な内分泌の知識を魅力的な図表とともに,簡潔にまとめました.

内分泌系は,個体の主作と種の維持のために必要な調節機構であり,様々な分野から多人な関心が持たれています.また同時に,身体内外の環境の変化に対応して,体内環境の恒常性(ホメオスタシス)の維持を行っており,そのシステムには未解明の部分が数多い領域です.

本書の構成は以下の8章となっています.
内分泌学総論/視床下部下垂体系/甲状腺/カルシウム調節ホルモン/膵臓/副腎/生殖/行動内分泌調節

執筆者一覧
明間立雄聖マリアンナ医科大学第一生理学教室
新井桂子日本医科大学生理学第二講座
有田順山梨医科大学第一生理学教室
今田育秀産業医科大学高気圧治療部
佐久間康夫*日本医科大学生理学第一講座
野島一雄愛媛県立医療技術短期大学臨床検査学科
樋口隆福井医科大学第二生理学教室
本田和正福井医科大学第二生理学教室
山岡貞夫獨協医科大学第一生理学教室
(五十音順.所属:1998年11月末現在.*編集者)
まえがき
ホルモンを情報伝達物質とする内分泌調節系についてのわれわれの知識は現在急速に増加している.あらたなホルモンが毎年リストに追加され,ホルモンの標的である受容体や,受容体以降の細胞内情報伝達機構についても,斬新な分子生物学的,細胞生理学的研究法により解明が進み,これまで説明のつかなかった生理現象や病態が明快に理解できるようになった.他方,これまで定説として受け入れられてきた説明が一転して否定され,挑戦的な研究課題として登場してきた現象もある.また,従来ホルモンとして単純に考えられてきた物質が,多様な部位で合成され,多彩な作用を持って神経系,免疫系などとクロストークすることが例外でないことも明らかになってきた.

このような事情から本書では現行の生理学の教科書ではカバーしきれない話題に焦点をあてた.特に比較生物学的な観点も重視したので,医学に限らず生物学全般の学科の学習に,既存の教科書の補助あるいはリファレンスとして有用であると確信している.動物における実験観察とヒトの病態を併せて学ぶことにより,基礎医学のみならず,生物科学全般に対する興味を喚起できればと願っている.また,臨床医学を目指す諸君には生理学的な物の見方を修得していただきたい.

本書の編集に当たっては,明快かつ簡潔な教科書の実現を目指した.この目標が達成されているかどうかは読者の判断に待ちたいが,内分泌生理学の研究の現状からやむを得ず煩雑な記述になった部分があることは否めない.読者諸君が本書に触発されて将来研究者あるいは科学的探究心に富んだ臨床家として研究に参画し,今日ではあいまいにしか述べられない現象について,少しでも明快な理解を可能とする成果を挙げたいと考えてくれるようになれば,編者としてこれ以上の喜びはない.

1998年2月
佐久間康夫
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